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デッド・カン・ダンス
今回はマニアックな音楽のご紹介である。
DEAD CAN DANCE
デッド・カン・ダンス、80年代に結成され、98年に解散した伝説的バンド。2005年に、ワールドツアーのため一度だけ再結成した。
この度DSDマスタリングされ、紙ジャケ仕様のSACDハイブリッドでオリジナルアルバム全8枚が再発売されたのを記念して、全ての人に受け入れられるはずもないマニアックなこのバンドをご紹介したいと思う。
デッド・カン・ダンスは、1981年、オーストラリアのメルボルンにて、リサ・ジェラルドとブレンダン・ペリーを中心に結成された。
オーストラリアでは大して評判にはならなかったようだが、イギリスに移り住み、群を抜いた個性的インディペンデントレーベルである4ADと契約後、まもなくそのレーベルの代表的アーティストとなる。
デッド・カン・ダンス(以下DCD)の音楽性を一言で表すのは難しい。ヨーロッパ的耽美主義を基本に敷きながらも、民族音楽や中世ヨーロッパ古楽、或はアンビエントミュージックなど、様々なジャンルから持ち込まれた音楽性を有し、ひたすら暗く、陰鬱だが、心の深い部分に突き刺さる強烈なインパクトを持っている。
アルバムはそれぞれにコンセプチャリズムを持たされ、一つの一貫した独創的イメージと、それに基づく枝葉的解釈による楽曲から構成されており、最後に結論的終焉を迎えるよう構成されたものが多い。
70年代のプログレッシブロックや、ドリーム・シアターなどがお好きな方であれば、比較的すんなりと受け入れることが出来るだろう。
DCDは“暗黒音楽”とも呼ばれるほど、ダークで内省的である。結成当初は5人組で活動しており、ゴシックでダークな沈み込むロックサウンドだったが、イギリスへ移住と共に、ロック志向の強かったメンバー3人が抜け、ロック的要素が大きく後退、ブレンダンとリサによるクラシカルで荘厳な響きを持つ音楽性へと移行した。
ただし、ただ単に暗く、陰鬱なのではない、DCDの音楽は、ロック風に言うと、「すっげ〜かっこいい!」のである。
元々アイルランド系でロンドン生まれのブレンダン・ペリーは、両親の仕事の関係でニュージーランドへ移住し、そこで出合った先住民の“マオリ音楽”に影響を受けてギターを手にしたそうである。
リサ・ジェラルドはメルボルン出身、ブレンダンと同じくアイルランド移民の子として生まれ、幼少からギリシャ、トルコ、イタリア、アイルランド、アラブの文化に触れ、インスパイアされてきたという。
DCDが音楽界に与えた影響は少なくない。
特に90年代から00年代に至るエレクトリックミュージックやアンビエントミュージックには絶大な影響を及ぼし、現在に至るまで熱狂的ファンを持ち続けている。
現在、ブレンダンはアイルランドの古い教会を購入し移住。そこを活動拠点としている。
またリサはオーストラリアに戻り、ソロ活動を行いアルバムも数枚リリース。映画「グラディエーター」のサウンドトラックにも参加している。
今回はこの難解なDCDのアルバムの中でも、比較的入り易いアルバム3枚をご紹介する。

"Spleen and Ideal" 「憂鬱と理想」
音質 9.2
音楽としての楽しさ 9.8
録音の趣 9.7
Amazonjp
ヴォリュームを大きめに設定してから再生して欲しい。
のっけからものすごいインパクトである。
1曲目のタイトルはDe profundis( out of the depths of sorrow ) 邦題“深キ淵ヨリ我呼ビカケタリ”
正にタイトル通り、異世界に於ける混沌とした深淵より、正体不明の何者かに呼びかけられるがごときサウンドに、思わず背筋が凍るような戦慄を感ぜざるを得ない。耳と脳を素通りし、人間以前の、生命に於ける原始的心理に直接突き刺さるインパクトを持って、このアルバムの開始を告げる曲である。
憂鬱と理想は85年の作品、彼らの2ndにあたり、ロック臭を完全排除し、リサとブレンダン二人による音楽性に移行した最初の一枚である。
音質はネオクラシカル的荘厳にして壮麗なる響きに包まれ、ギターやシンセによる基本的旋律を、ゲスト・プレイヤーたちによるチェロ、ティンパニー、トロンボーン、バイオリン、ソプラノヴォイスなどが彩りを加えていく。
またこのアルバムはフランスの詩人“ポードレール”からインスパイアされたコンセプトを基に作られている。彼の名を決定付けた詩集「悪の華」、その最初の表題こそが本作のタイトルである「憂鬱と理想」なのである。

"Aion"
音質 9.3
音楽としての楽しさ 9.8
録音の趣 9.8
Amazonjp
"Aion"という言葉は、AN AGEという意味らしく、世代/時代のことをさしているらしい。
中世の幻想画家“ヒエロニムス・ボス”のジャケット画が指し示すとおり、中世〜ルネッサンス期のヨーロッパ音楽をコンセプトに置くアルバムである。
90年の作で、私が初体験したDCDはこのアルバムである。
彼らのイメージする中世暗黒世界を音楽で表現したといえる本作だが、実際の中世〜ルネッサンス期に於けるヨーロッパトラッドミュージックのDCDらしいカバーも含まれている。トラック2の“サルタレロ”などがその典型で、この曲は14世紀ごろ、中部ヨーロッパの庶民の間で流行した舞踏曲であり、原曲は「BISレーベル」のWoods, Women and WineというCDで聴く事が出来る。古いヨーロッパの音楽、いわゆる“古楽”についてはいずれまた語るが、ご興味のある方はこのCDも買ってみられると良いだろう。
音質はチャーチミュージックのような豊かなアンビエント包まれたものが多いが、楽曲によってはエコー感を廃したドライな音質で作られているものもあり、曲の持つ雰囲気に重点を置いた、非常に趣の良い音質となっている。

"Into The Labyrinth"
音質 9.6
音楽としての楽しさ 9.7
録音の趣 9.9
Amazonjp
93年の作品、「イントゥ・ザ・ラビリンス」
ラビリンスとは「魔宮」つまり魔の潜む、恐るべき迷路のこと。
この時期にブレンダンはアイルランドの古い教会を買って移住し、リサは結婚してメルボルンに戻る。
テクノロジーのおかげで離れていても音楽活動に支障が出ない時代となったため、それぞれ独自のライフスタイルを確立して行ったのであろうが、それが解散の遠因となった事は想像に難くない。
このアルバムから大胆な方向転換を図り、ヨーロッパ耽美主義的方向性からよりエスニックな方向性へと移り変わる。
本作の1曲目「ユルンガ(聖なる踊り)」ではその特徴が顕著であり、ゆっくりと、そして間延びしたメロディとリサのヴォーカルが延々と続き、まるで時間が止まったかのような錯覚に陥る、いうなれば“静寂を表現する音”とでも言うべきか、そしていきなり、その静寂を引き裂くものが、なんとマラカスの音である。普通に聴けば何気ないマラカスの音であるが、胸がいっぱいになるほど静寂を味あわされた後に、突如として現れるそれは、静寂を引き裂き、心臓を直撃する。それを合図にエスニックなダンスミュージックが始まり、リサのビブラートを効かせた第三世界風のヴォイス続く。まるで迷路の中を、それも決して暗くはなく、狂おしいほどに明るい迷路、丁度半地下の、天井を格子で渡してあり、その上を人々が行きかう市場の雑踏のようになっている迷路。そこを抜け出した瞬間、異世界の踊り子たちが踊り狂う場面に、突如として出くわしたような気持ちにさせる。
音質は、上の二作とは打って変わって“閉じたアンビエント感”であり、正に魔宮という表現がぴったりである。
ジャケットにはモロッコの写真家Touhami Ennadreが写した「老人の手」。
ブレンダンがこのアルバムで表現したかったのは自然賛美あふれるフォークルーツ的なものだったらしい。しかしブレンダンの手にかかれば、フォークルーツもそれを通り越して、更に原始的なる物へと帰趨しているかのようである。
デッド・カン・ダンス、暗く陰鬱で難解だが、何も考えずに聴いても実にかっこいいのである。
かっこいい音楽がお好きで、異世界への憧れを根底に持つ方ならば、誰でも好きになれるバンドだと思う。
DEAD CAN DANCE
デッド・カン・ダンス、80年代に結成され、98年に解散した伝説的バンド。2005年に、ワールドツアーのため一度だけ再結成した。
この度DSDマスタリングされ、紙ジャケ仕様のSACDハイブリッドでオリジナルアルバム全8枚が再発売されたのを記念して、全ての人に受け入れられるはずもないマニアックなこのバンドをご紹介したいと思う。
デッド・カン・ダンスは、1981年、オーストラリアのメルボルンにて、リサ・ジェラルドとブレンダン・ペリーを中心に結成された。
オーストラリアでは大して評判にはならなかったようだが、イギリスに移り住み、群を抜いた個性的インディペンデントレーベルである4ADと契約後、まもなくそのレーベルの代表的アーティストとなる。
デッド・カン・ダンス(以下DCD)の音楽性を一言で表すのは難しい。ヨーロッパ的耽美主義を基本に敷きながらも、民族音楽や中世ヨーロッパ古楽、或はアンビエントミュージックなど、様々なジャンルから持ち込まれた音楽性を有し、ひたすら暗く、陰鬱だが、心の深い部分に突き刺さる強烈なインパクトを持っている。
アルバムはそれぞれにコンセプチャリズムを持たされ、一つの一貫した独創的イメージと、それに基づく枝葉的解釈による楽曲から構成されており、最後に結論的終焉を迎えるよう構成されたものが多い。
70年代のプログレッシブロックや、ドリーム・シアターなどがお好きな方であれば、比較的すんなりと受け入れることが出来るだろう。
DCDは“暗黒音楽”とも呼ばれるほど、ダークで内省的である。結成当初は5人組で活動しており、ゴシックでダークな沈み込むロックサウンドだったが、イギリスへ移住と共に、ロック志向の強かったメンバー3人が抜け、ロック的要素が大きく後退、ブレンダンとリサによるクラシカルで荘厳な響きを持つ音楽性へと移行した。
ただし、ただ単に暗く、陰鬱なのではない、DCDの音楽は、ロック風に言うと、「すっげ〜かっこいい!」のである。
元々アイルランド系でロンドン生まれのブレンダン・ペリーは、両親の仕事の関係でニュージーランドへ移住し、そこで出合った先住民の“マオリ音楽”に影響を受けてギターを手にしたそうである。
リサ・ジェラルドはメルボルン出身、ブレンダンと同じくアイルランド移民の子として生まれ、幼少からギリシャ、トルコ、イタリア、アイルランド、アラブの文化に触れ、インスパイアされてきたという。
DCDが音楽界に与えた影響は少なくない。
特に90年代から00年代に至るエレクトリックミュージックやアンビエントミュージックには絶大な影響を及ぼし、現在に至るまで熱狂的ファンを持ち続けている。
現在、ブレンダンはアイルランドの古い教会を購入し移住。そこを活動拠点としている。
またリサはオーストラリアに戻り、ソロ活動を行いアルバムも数枚リリース。映画「グラディエーター」のサウンドトラックにも参加している。
今回はこの難解なDCDのアルバムの中でも、比較的入り易いアルバム3枚をご紹介する。

"Spleen and Ideal" 「憂鬱と理想」
音質 9.2
音楽としての楽しさ 9.8
録音の趣 9.7
Amazonjp
ヴォリュームを大きめに設定してから再生して欲しい。
のっけからものすごいインパクトである。
1曲目のタイトルはDe profundis( out of the depths of sorrow ) 邦題“深キ淵ヨリ我呼ビカケタリ”
正にタイトル通り、異世界に於ける混沌とした深淵より、正体不明の何者かに呼びかけられるがごときサウンドに、思わず背筋が凍るような戦慄を感ぜざるを得ない。耳と脳を素通りし、人間以前の、生命に於ける原始的心理に直接突き刺さるインパクトを持って、このアルバムの開始を告げる曲である。
憂鬱と理想は85年の作品、彼らの2ndにあたり、ロック臭を完全排除し、リサとブレンダン二人による音楽性に移行した最初の一枚である。
音質はネオクラシカル的荘厳にして壮麗なる響きに包まれ、ギターやシンセによる基本的旋律を、ゲスト・プレイヤーたちによるチェロ、ティンパニー、トロンボーン、バイオリン、ソプラノヴォイスなどが彩りを加えていく。
またこのアルバムはフランスの詩人“ポードレール”からインスパイアされたコンセプトを基に作られている。彼の名を決定付けた詩集「悪の華」、その最初の表題こそが本作のタイトルである「憂鬱と理想」なのである。

"Aion"
音質 9.3
音楽としての楽しさ 9.8
録音の趣 9.8
Amazonjp
"Aion"という言葉は、AN AGEという意味らしく、世代/時代のことをさしているらしい。
中世の幻想画家“ヒエロニムス・ボス”のジャケット画が指し示すとおり、中世〜ルネッサンス期のヨーロッパ音楽をコンセプトに置くアルバムである。
90年の作で、私が初体験したDCDはこのアルバムである。
彼らのイメージする中世暗黒世界を音楽で表現したといえる本作だが、実際の中世〜ルネッサンス期に於けるヨーロッパトラッドミュージックのDCDらしいカバーも含まれている。トラック2の“サルタレロ”などがその典型で、この曲は14世紀ごろ、中部ヨーロッパの庶民の間で流行した舞踏曲であり、原曲は「BISレーベル」のWoods, Women and WineというCDで聴く事が出来る。古いヨーロッパの音楽、いわゆる“古楽”についてはいずれまた語るが、ご興味のある方はこのCDも買ってみられると良いだろう。
音質はチャーチミュージックのような豊かなアンビエント包まれたものが多いが、楽曲によってはエコー感を廃したドライな音質で作られているものもあり、曲の持つ雰囲気に重点を置いた、非常に趣の良い音質となっている。

"Into The Labyrinth"
音質 9.6
音楽としての楽しさ 9.7
録音の趣 9.9
Amazonjp
93年の作品、「イントゥ・ザ・ラビリンス」
ラビリンスとは「魔宮」つまり魔の潜む、恐るべき迷路のこと。
この時期にブレンダンはアイルランドの古い教会を買って移住し、リサは結婚してメルボルンに戻る。
テクノロジーのおかげで離れていても音楽活動に支障が出ない時代となったため、それぞれ独自のライフスタイルを確立して行ったのであろうが、それが解散の遠因となった事は想像に難くない。
このアルバムから大胆な方向転換を図り、ヨーロッパ耽美主義的方向性からよりエスニックな方向性へと移り変わる。
本作の1曲目「ユルンガ(聖なる踊り)」ではその特徴が顕著であり、ゆっくりと、そして間延びしたメロディとリサのヴォーカルが延々と続き、まるで時間が止まったかのような錯覚に陥る、いうなれば“静寂を表現する音”とでも言うべきか、そしていきなり、その静寂を引き裂くものが、なんとマラカスの音である。普通に聴けば何気ないマラカスの音であるが、胸がいっぱいになるほど静寂を味あわされた後に、突如として現れるそれは、静寂を引き裂き、心臓を直撃する。それを合図にエスニックなダンスミュージックが始まり、リサのビブラートを効かせた第三世界風のヴォイス続く。まるで迷路の中を、それも決して暗くはなく、狂おしいほどに明るい迷路、丁度半地下の、天井を格子で渡してあり、その上を人々が行きかう市場の雑踏のようになっている迷路。そこを抜け出した瞬間、異世界の踊り子たちが踊り狂う場面に、突如として出くわしたような気持ちにさせる。
音質は、上の二作とは打って変わって“閉じたアンビエント感”であり、正に魔宮という表現がぴったりである。
ジャケットにはモロッコの写真家Touhami Ennadreが写した「老人の手」。
ブレンダンがこのアルバムで表現したかったのは自然賛美あふれるフォークルーツ的なものだったらしい。しかしブレンダンの手にかかれば、フォークルーツもそれを通り越して、更に原始的なる物へと帰趨しているかのようである。
デッド・カン・ダンス、暗く陰鬱で難解だが、何も考えずに聴いても実にかっこいいのである。
かっこいい音楽がお好きで、異世界への憧れを根底に持つ方ならば、誰でも好きになれるバンドだと思う。
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